「英雄のいない時代は不幸だが,英雄を必要とする時代はもっと不幸だ」という言葉を借りるなら,「もうひとつのブラウザがない時代は不幸だが,もうひとつのブラウザを必要とする時代はもっと不幸だ」。そんな不幸な時代が,過去にあった。だが,いまは違う。
quote:ウェブ解析会社であるウェブサイドストーリー社によると,インターネット・エクスプローラー(IE)に対するファイアフォックスの侵食は勢いを失った。ファイアフォックスの市場シェアは,今年4月に6.75%だったのが9月に7.86%。IEの方は,4月に88.46%にまで下がったが,9月も88.86%でほとんど変わらない。つまりファイアフォックスの約1%の増加分は,オペラやアップル社のサファリなどを食ったものということだ。
レジスターは,つまりファイアフォックスはMS嫌いをもうすでに食い尽くしてしまい,だからその勢いも止まってしまったのだ,と結論づける。まぁ実際のところ,ファイアフォックスがIEに比べてこの機能がとてつもなく便利だとか,この点が激しく安全でうれしいとか,そんな理由でブラウザを鞍替えした人はごくわずかで,普通の人はわざわざ新しいブラウザをインストールして使うなんてことはせず,最初からあるものを使うに決まっている,と云うことになりそうだ。だが,もちろんその前提のなかで,6〜7%ものシェアを奪い取ったということが,ファイアフォックスのすごさ,ではあるのだけど。
もちろんできれば,ファイアフォックスがトップシェアを奪い取るような激伸をみせてくれたら,個人的にはうれしく思うが,そこまで期待するのはたぶん酷なんだろう。とは云え,それまでIEでしかウェブ表示のチェックをしていなかったウェブ制作者が,ファイアフォックスでもチェックをするようになった点も,そして,オペラがフリーウェアへと転向をはかったことも,すべてはファイアフォックスというきっかけによるものなのは確かだ。そのきっかけをつくることは,なによりも難しい。だから,このもうひとつのブラウザには,途方もない存在意義,存在価値がある。
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